今回の記事では、投資家にとって有名なジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資の未来」に書かれている高配当戦略が今も有効なのか現在の相場で確認してみたいと思います。
■〜2000年代前半までは高配当株が有利
「株式投資の未来」は2005年11月に発売された本で、私も株式投資を始めて10年ぐらいたった後に読み「ふむふむなるほど、そうだったのか」とかなり納得させられる内容でした。
この本では1950年以降の株式相場を分析し、その時代の成長株(今で言うとハイテク株など)ではなく、コカ・コーラやP&G、エクソン・モービル、タバコ株などの伝統的な企業のパフォーマンスの方が良かったという内容が書かれています。
私がこの本を読む前には「当然高成長すると予想される企業に投資するのが株式投資の醍醐味で、それによって高いリターンが得られる」と思っていました。
この本では高成長が期待されるハイテク企業としてIBM、昔からあるビジネスを展開するエクソン・モービル(本ではスタンダード・オイル・オブ・ニュージャージー;現エクソン・モービルの一部)が比較として取り上げられています。
IBMは1960年〜1980年代にかけて最先端企業としてコンピュータ市場ではほぼ独占状態というほどの成長した企業です。
ちなみに1950年〜2003年までの主要指標としては、
- 1株あたりの売上高;IBM>スタンダード・オイル
- 1株あたりの配当;IBM>スタンダード・オイル
- 1株あたりの利益;IBM>スタンダード・オイル
全部IBMの方が優れています。
で、株価の方はと言うと
こんな感じです。
チャートは1980年時点を1として指数化しています。
あれ???
IBMが7倍になったのに対して、エクソン・モービルは13倍となりました。
利益・配当・売上高がIBMの方が上回っているのに株価はと言うと、エクソン・モービルの方が勝ったということです。
これは「株式投資の未来」で書かれている「成長の罠」と呼ばれるもので、「投資家の利益は企業の利益に比例して大きくなる」という勘違いからきています。
株価が上昇する要因は、投資家が期待している以上に実際の企業が利益を上げたときです。
つまり成長があまり期待されていない昔からあるような企業は、ハイテク株のように企業を大きくするための投資をすることなく、得られた利益は配当金としてたくさん投資家に還元する。
これが長期のパフォーマンスを大きく上げたという事実が、膨大なデータ分析とともに書かれています。
まさに「目から鱗」という感じでした。
この本を読むとなるほど、だから高配当戦略が有効なんだと思ったものです。
■2010年以降はハイテク株が有利
「株式投資の未来」が出版されたのは2005年なので、ちょうど2000年のITバブルが弾けた後で、「やっぱりハイテク株はあかんやん」という雰囲気の時に書かれたものです。
実際1999年〜2005年のチャートをみると、ハイテク株が多くを占めるナスダック100指数はピークの25%程度まで下落しました。
ではその後はどうなったのか、2009年以降のS&P500、高配当株(VYM)、ハイテク株(ナスダック100)の成績を比較してみてみます。配当込みの成績としています。
2009年以降の成績を見るとITバブルでボコボコになっていたハイテク株の伸びが素晴らしいです。
「成長の罠」どこいった?という感じになっています。
もしかしたら現状がハイテクバブル気味になっている可能性もあります。
でもバブルは弾けるまでバブルとわからないので、このままハイテク株がさらに伸びていく可能性もあります。
また2020年3月のコロナショックにより暴落が起きた時にも変調がありました。
ディフェンシブ株が多いと言われている高配当株(VYM)の下落が大きく、いつも割高と言われるハイテク株がほとんど下落しませんでした。
これは世界的なコロナ禍によって外出ができず、家の中で利用できるITの利用者が増え、ハイテク株の利益が上がりやすかったと言う側面もあります。
こう言ったことからも、これまで言われていた常識
- ハイテク株はハイリスク・ハイリターンで変動率が大きく、暴落する際は一番値下がりする
- 高配当株はディフェンシブ株が多いので不景気時にはパフォーマンスがS&P500やハイテク株と比べて相対的に上昇する
などは徐々に変わってきている気がします。
■まとめ
ジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資の未来」に書かれている内容を現状の相場から検証してみました。
感覚としては最近のハイテク株の伸びが市場参加者の想定を超えている気がしています。
何が正しいかは未来になってみないと分かりませんが。。
今後も徐々にこう言った常識は変わってくると思うので、自分で相場をみながら、自分の頭で考えて、自分に合ったポートフォリオを組んで、自分の責任の元で投資を行うことが大切だと思いました。
本を読んで知識を得ることは重要ですが、それが本当に正しいのか自分で検証しながら、情報を自分なりにアップデートしていくことが大切ですね。
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