「DXの思考法」という何やら難しいタイトルの本を読みました。
自分で買ったわけではなく、社内の課題図書という形でいくつかの本が提示され、その中から普段読まないような本を選びました。
著者は東京大学出身で、文章も書いている内容も難しく、初めは面白くないなぁと思いながら読んでいたものの、途中から「DXってこんな感じなんだ〜」とストンと腑に落ちる感じがありました。
万人におすすめするような本ではありませんが、「DXってなんなの?」って方に向けて簡単にまとめて解説します。
IT技術の現状
PCは単純計算が得意
私は大学時代に数値解析のプログラミングを徹底的に行い、ITについての知識はある程度あります(というかあるつもりだっただけでした)。
PCが得意とするのは私が大学時代に行っていたような数値解析です。
例えば、
- F=ma(ニュートンの運動法則)
という式があるとして、PCはこの式を使って自動車の衝突解析(自動車が壁に衝突し、どのように力を受けて変形していくかというような解析)なんかの計算が非常に得意です。
PCの性能向上により、これらの研究が実験を行わなくてもPC上で簡単にできるようになりました。
この例のようにPCは「単純な方程式を無数(何百万行の計算)に高速で行う」のが得意です。
ここまでが私が持っている知識でした。
ディープラーニング
先程書いたようにPCは高速で計算するのが得意ですが、囲碁のように10の170乗とも言われる天文学的な計算(宇宙に存在する原子の数は10の80乗)が必要なものは苦手な分野で、長らくPCは囲碁や将棋などの世界では人に勝てませんでした。
しかし人間はPCがやるように全てのパターンを計算して囲碁を打っているわけではなく、過去の対戦パターンから「勝ちにつながるパターン」をもとに戦います。
この考え方をPCにも応用し、「この手を打つと勝てるっぽい」というパターンを認識させ、大量の対戦データを元に機械学習を繰り返すことで飛躍的に性能を向上させました。
これはディープラーニングという技術で、2016年には囲碁の世界のトップ棋士を打ち負かしました。
このディープラーニングで用いられる「〜っぽい」というレイヤー構造を何層にも重ね合わせ、さらにクラウドのデータや計算能力とつながることで、急速に性能を上げてきています。
PCというのは「0」か「1」の二進数で処理を行うため、初めは先に書いたような数式の計算しかできませんでした(人間がPCが計算できるように手を加える必要があった)。
ところがディープラーニング技術により、
- 〇〇へ行きたいと話しかけるだけで最適な行き道を示してくれたり
- おすすめの本や映像コンテンツを表示してくれたり
- 写真で撮影したものを自動で検索してくれたり
などができるようになりました。
要は人間が直感的にITを便利に扱えるようになったということです。
そしてこれらの技術がインターネットなどのサイバー空間上にあったものが、現実社会に飛び出しIoTを通じてさまざまなデバイスとつながり、実社会のシステム全体に浸透しつつあるというのが現状です。
そして今後はIoTとディープラーニングの組み合わせにより、人間の作ったシステムが自ら判断し、システムを環境に合わせて自己改良する可能性が開けていると。
「はぁ〜、便利になったとは思ってたけど、全然知らなんだ。。。」
というのが正直な感想です。
DXとは何なのか?
ようやく現状認識のスタートラインに立ったところで、DXとは何なのかについてです。
DXというのは「デジタルトランスフォーメーション」の略で、トランスフォーメーションというのは、全く違う形に変えてしまうという意味です。
分かりやすくいうと、こいつのことです↓
なので今までのような「IT技術を使って業務を効率化!」なんてのとは違います。
ちなみにうちの会社がうたっているDXは今までの延長上で使われている感じです。
DXというのは、「IT技術によって会社の事業形態・収益形態を変えてしまおう」というものです。
よく分かりませんね。
これでは私もよく分かりません。
私なりに具体例で考えてみます。
例えばテスラが今後EVを自動運転化し、ユーザーは自動車に乗りたい時にスマートウォッチをタップすれば、自動運転で流れている近くの車が配車され、すぐに車に乗って移動できる。行き場所は事前にスマートウォッチに話しかけるだけです。支払いも自動。
そしてその自動運転システムを使うにはテスラに利用料をサブスクで払えばいいだけ。
こんなイメージでしょうか。
この例では産業構造時代と変えてしまうのでIXと言われそうですが。
これだけ便利になれば自家用車を持つ意味はなく、公共交通もいらなくなりそうです。
DX時代では自社のみで使うことを考えるのではなく、汎用化できないか?というのがキーみたいです。
Amazonが元々は自社用に開発したクラウドAWSの成功がいい例ですね。
携帯がiPhoneに、本がKindleに、CDがアップルミュージックやAmazonミュージックに駆逐されたように、これからはDXを先行させた企業がいろんなところで世の中を変えていく時代です。
また日本人が気をつけなければならないのは、ガラパゴス化しやすいということ。
2Gではiモードが世界で最も普及したものの、その後ガラパゴス化によりiPhone、Androidに完全に駆逐された過去があります。
この本では、自動車のEVについて日本人が陥りがちな失敗例が挙げられてました。
- EVというとキーとなるのは電池
- →そこで電池に先行投資し
- →→高性能な電池を世界で売りまくり
- →→→EVにおける世界の覇者になろう
めちゃ、ありそう。。。
似たようなシナリオは過去に液晶ディスプレー、太陽電池などにもあり、恩恵はこれらを製造した企業ではなく、アップル社が最も受けたと。
これも、ある。。。
DXの思考法
自分のITに関する知識が乏しく、備忘録的にツラツラと書きましたが、ようやく本題です。
「じゃあ、どうすればいいのだ?」
その答えはいろいろと本の中に書かれていますが、簡単にまとめると以下のようになります。
- 自社の現状を認識する
- 課題から考える
- 抽象化してパターンを探る
1.自社の現状を認識する
まずは現状認識です。
現状認識といってもDX時代にはやり方があります。
まずは世の中にあるデジタルサービスを一覧にする(下図の右端のイメージ)。
そしてまずはこの本棚にあるものを組み合わせて自社のビジネスにできないかを考える。
次に本棚にないものを自社で開発したり、カスタマイズして製品にできないかを考える。
これを本書では「本屋にない本を探す」と表現しています。
こうすることで自社の持っている技術を俯瞰的に見ることができ、課題も浮き彫りになってきます。
変化のスピードが早い時代では課題を見つけて全て自社開発していては時代に取り残されてしまうということです。
実際にNetflixはストリーミングサービスを競合の誰よりも早くグローバル展開するために、クラウドサービスであるAWSへの全面的な移行を決め、Netflix自身はコンテンツと顧客が試聴する経験を結びつけるシステム開発に注力し、大成功を納めました。
2.課題から考える
ビジネスでよくやるのが解決策から考えるというものです。
解決策から考えるということは、すぐに思いつくことであったり、既にあるツールをちょっといじってどうにかしようとなります。
これが何を産むのか?
ガラパゴスです。
すでにあるツールをちょっとずつ改良して行った結果、携帯電話はボタンだらけになり、ほとんどの人が使わない機能満載の状態、いわゆるガラケーの誕生でした。
反対に課題から考えるということは、これまでの型を破って自由に解決策を考え、その選択肢を増やすことになります。
こうしてできたのがiPhoneでした。
iPhoneではアプリを入れることで自分の好きなようにカスタマイズできるようになりました。
また携帯電話をただ製品を売るというビジネスから、アプリなどのサービスでも利益を上げるという新しいビジネスモデルをつくりました。
3.抽象化してパターンを探る
最後は先程の課題から考えると似ていますが、まずは具体的に考える前に物事を全体的にみて抽象化して考えることが重要です。
そして自社の開発した製品が、他の会社や他の業種にも使えないのかを考える必要があると。
特にGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)はこの抽象化してパターン化する(ディープラーニングのところで解説したレイヤー構造を造る)のが得意なようです。
まとめ
課題として与えられて読み始めて読んだ本でしたが、「こんなにもITについて知らなかったんだ」というのが正直な感想でした。
自分の会社でもDXについて取り組み始めていますが、この本を読んで自社の現状とどういうふうに進めていけばいいのかがなんとなく分かりました。
自分の会社はDXにはまだ程遠い位置にいますが、課題が多く面白い分野のような気がします。
DX化。
もしかしたら私のサラリーマン人生をかけるに値する課題かもしれません。
じゃ。
私が資産運用についてまとめたHP→くわにゃんの長期資産運用